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【レビュー】和風伝奇ADV「剣が君」はいいぞ【ネタバレなしを意識】

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こんにちは、キタノリクです。

最近switchで最近発売(移植)された「剣が君forS」の本編をプレイいたしました。一言で感想を言えば、想像してた100倍よかった…!

あまりに良かったため、いてもたってもいられずブログを立ち上げてしまった…そんな、とってもスンバラシー「剣が君」の魅力が一人でも多くの人に伝わるよう、6人それぞれの攻略キャラクター解説とプレイ感想を、出来るだけネタバレしないように配慮しながら語ってゆきたいと思います。(ネタバレしてないとは言ってない)

一応未プレイの方へ向けて内容の詳細はバラさないように配慮して書いたつもりですが、かなり熱量込めて書いてますのであまりの熱の入れように知らず知らずのうちに内容をバラしてる可能性もございます。というか勘の良い方なら「あっ(察し)」ってなることも十分有り得ます。もし不幸にもアイディアロールに成功してしまった場合はブラウザバックで逃げるか御自分の察しの良さを褒め称えて差し上げてください。

ちなみに乙女ゲームをプレイするのはおよそ10年ぶりです。なのでそういう昨今のトレンド乙女ゲームと比較したような客観的でハイカラな解説を期待された方には申し訳ありませんが、それは、自分には、無理です(白状)こちらの解説と感想は完全に勝手な私の主観と独断と偏見ゴリゴリ200パーセントによって書かれていることを先手を打ってお伝えしておきます。
以下、ゲームのあらすじと特徴、6人いる攻略キャラクターと主人公それぞれの独自解説と感想、おすすめ攻略順、そして最後にゲーム全体の総評です

 

 

本編あらすじ

前章「東海道中偽花嫁行列編」

舞台は一六三三年の江戸時代。時の将軍3代家光の妹君である久姫が駿府城代へ嫁入りするにあたり、病弱な久姫に代わって駿府までの花嫁行列の影武者を務めるよう、主人公である香夜は幕府から密命されます。その際に用心棒として幕府からお役目を受けた6人のお武家様が今回の攻略キャラクターとなります。この護衛6人と東海道を旅し、数多の困難を乗り越えて距離を縮めつつ、駿府城を目指すところが所謂導入部分「東海道中偽花嫁行列編(前章)」にあたります。

後章「剣取り御前試合編」

前章で一番好感度を高めたキャラクターのそれぞれの個別ルートへ分岐します。

ちなみに「剣取り御前試合」とは幕府主催で開催される剣術試合のこと。御前試合で最終的に勝ち上がった者を「一番刀」と呼び讃え、その者には本人が望むがままの褒美を与えるとともに、妖怪を滅する力を持つ刀「天下五剣」(※天下五剣とは、鬼丸国綱/童子切/大典太/三日月宗近/数珠丸の五振り)のうち一振りも授けられます。

駿府へ至る偽花嫁行列のお役目終え、主人公は故郷の江戸へと戻ります。江戸では近く「剣取り御前試合」が開かれることとなっており活気付く江戸で主人公と攻略キャラクターは再び邂逅を果たしそれから物語がはじまる、というのがざっくりとしたあらすじです。

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本作の特徴

 エンディングは「剣」と「君」の2つに大別され、更にそこからそれぞれ2種類ずつ分岐します。結論、エンディングは4種類あるということです。これらは後章での選択次第で分岐します。侍の魂である剣を極めるか、剣を捨てて主人公の手を取るか、という厳しい選択を迫られるという内容です。

「剣」ルート(荒魂/奇魂)

 剣ルートの特徴は、6人それぞれが持つ侍としての矜持を貫くということです。剣に生きるということは剣に死すということでもあります。結末によっては死が二人を分かつこともあるでしょう。どんな結末を迎えるにせよ大きな覚悟を迫られるシナリオになっています。

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「君」ルート(和魂/幸魂)

君ルートの特徴は、主人公の存在が攻略キャラクターの運命を良くも悪くも大きく変えることにあります。幸福な結末になるか、それとも違うものになるかはキャラクターによって千差万別。しかしどのキャラクターの君ルートも共通しているのは、二人が手を取り合って幸福になる結末を夢見ながら前に進んで行くという点です。

 

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黒羽実彰(CV:前野智昭

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<二五歳/推奨攻略順:荒→奇→和or幸>

6人の攻略メンツの中で剣の実力が最も上かつ歳も上なだけあって、性格も他のメンツより大人で穏やかな紳士といった感じでしょうか。花嫁行列の道中では自身の都合より、その場を円滑に動かす為の最善策を提示してくるところや神に祈りを捧げる様子を見るあたり倫理観や道徳観も大変優れていると感じます。剣も強くて頭も良くて高い倫理観もお持ちで望まずして周囲に人が集まる人徳を持つ、そんな絵に描いたような完璧超人かと思いきや、下戸であったり鈴懸に「おじさん」呼ばわりされてちょっと眉を顰めるあたりでちゃんと人間味を感じるのでそういうギャップが実彰の魅力なんだろうと感じました。シナリオに関しては他のキャラが純粋な強さや力を求めて剣を取るのに対し、実彰自身は強さを極めたが故の苦悩と過ちを抱えている為、如何に「剣を抜かないか」という一種逆説的な強さを求められるのが特徴に思います。地位名声権力といった世俗や剣から離れようとすればするほど、まるで呪いのようにそれらが絡み付いてくる様子が彼の因果なさだめを感じさせます。

秘密主義で自分の心の内側に踏み込まれそうになると途端に壁を作り距離を取ってしまう性質であるため、自ら日の当たる場所へは決して出てきません。待っているだけでは彼との恋は発展しないがゆえに追われるより追いたい!という肉食な方にはドストライクゾーンのキャラかと思います。彼のシナリオは、主人公の親友お松ちゃんが大変いい仕事をします。お松ちゃんが剣ルート後章終盤で彼にかける言葉を聞くと実彰がどれだけ不器用で慈悲深い人間か改めて気づかされ、そして彼ほど命を愛でることの出来る人間がなぜ罪に手を染めなければいけなかったのか、その理由と悲しみに心が震えます。

ちなみに実彰はどの攻略サイトを覗いても序盤攻略をお勧めされることが大変多いキャラクターなのですが、大いに頷けます。というのも、このゲームのエンディングの大枠は「剣」か「君」かで二分されているのですが、実彰のシナリオは剣と君の差異がハッキリしている為ゲームの特徴を掴むにはもってこいなのだと思います。荒魂がとてつもなく厳しく冷たい悲恋エンドに対し、和魂エンドはもはやギャグの域に突入しているのでは?といった具合です。

また、実彰を序盤に攻略するのをお勧めするもう一つのポイントとしては、序盤で実彰の正体を知っておくと、この先他のキャラ攻略で再度プレイする際に護衛六人の間での会話や他キャラ個別ルートで彼の魅力がさらに感じられるからというのもありますね。まさに一粒で二度美味しいというキャラクターだと思います。

 

縁(CV:置鮎龍太郎

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<二三歳/推奨攻略順:奇or和→荒or幸>

乙女ゲームの攻略キャラで大体一人はいますね、こういう所謂女タラシというか遊び人の枠。でも皆さん忘れてはなりません、ドラクエ3だって遊び人という職業を経てこそ賢者になれる事実に。ということで縁ルートの感想です。徳川幕府密偵で武術の腕は間違いなく一流ですが性格のほうはかなりいい加減。いかにもな遊び人の風体で姫である主人公の尻に引っ付いて回り破廉恥な言動で主人公を揶揄う、一見すると間の抜けたキャラクターではありますが、前章をプレイする限りでも窮地の場面では臨機応変に適切な指示を飛ばしたりギスギスしてしまった場の空気をパッと緩めるようなムードメーカー的行動や言動を取ったり、かと思えばわざわざ当て馬になって相手を挑発してみせたりと、その内実は見た目通りというわけでは決して無くかなり柔軟かつ成熟した精神の持ち主であるということが窺えます。その言動行動は本音なのか計算なのか、掴みどころがなく根無草な彼から時折見え隠れする育ちの良さや教養の高さ。それこそが縁の魅力であり、実彰とはまた逆のミステリアスなギャップの持ち主と言えるのではないでしょうか。普段は不真面目な彼ではありますが不思議と周りに人が絶えない、どこか憎めない愛嬌のあるキャラクターです。

実彰が無益な殺生を好まないのと同様に、縁も花嫁行列の護衛中あまり剣を抜く様子がありませんでしたが、これに関しては「抜かない」というより「抜きたくない」理由があります。武士として生きることを他の誰よりも強要される立場にいること、そして縁がかつて抱いていた剣への純粋な憧れが彼を苦しめる呪縛へ姿を変えた悲劇。縁の「剣」に纏わる悲しい過去を知ったとき、なぜ彼が放蕩者になってしまったのかという事実も相まってプレイした皆さんは心を痛めることでしょう。

縁のエンディングもまた剣と君で大きな差異があります。まずは奇魂和魂のエンドをご覧いただいて「剣」と「君」、どちらが縁が求める結末なのかを考えてから先の荒魂幸魂をプレイしていただくとよりシナリオを楽しめることと思います。ちなみに巷では圧倒的に荒魂ルートを推す声が大きいようですね。

余談ですが縁と実彰、この二人はシナリオ上多少なりの関係があるので、実彰と近いプレイ順番で攻略されたほうが面白いかなと思います。縁の正体を知ってから再度前章や他キャラ個別ルートで活躍する縁の姿を見るとまた違った視点を持ててこちらも楽しいので、実彰と同じく序盤攻略をお勧め致します。

 

螢(CV:KENN)

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<一九歳/推奨攻略順:荒→奇or和→幸>

ツンデレです。これぞ乙女ゲームの攻略キャラの王道、わかりやすくツンデレです。少女漫画でもよくある取り合わせ、所謂「喧嘩ップル」というやつです。前章ではあれだけ厳しく冷たく主人公に当たり、個別ルート後章の初めでもすれ違いにより喧嘩ばかりだった螢が徐々に主人公に心惹かれていく様は、まるで飾り気のない等身大の恋愛を見ているようです。

螢は他攻略キャラクターと比べても「強さ」と「力」への執着が大変強いキャラクターです。それは普段の生真面目で我武者羅な彼の行動や言動、江戸剣取り御前試合で一番刀を目指す姿で十分読み取れることでしょう。力で解決することだけが全てじゃないと語る主人公に対し、それは所詮綺麗事だと吐き捨てるのは、彼が揉め事の多い江戸の町の同心であるからというのもありますが、それ以上に大きな理由を秘めています。一見する粗野で冷たい螢の秘密と過去を知ったとき、つっけんどんで無愛想な彼が持つ本物の優しさと覚悟の存在に気付くことでしょう。螢の過去を考えれば江戸で同心をするのは勿論、主人公に恋をすることすらあり得ないことなのです。江戸の平穏を守り主人公を愛した事実こそが、彼の優しさの証明と覚悟の表明にほかなりません。

螢の抱える秘密は攻略キャラクターそれぞれが抱えているものの中でもかなり大きく、それは国自体をも揺るがしかねない爆弾でもあります。螢と主人公、二人の清く美しい恋がエンディングによっては悲しくも万人に祝福されるとは限らないという事実に、胸が苦しくなるシナリオです。螢はキャラクターは勿論、シナリオに関しても乙女ゲームとして王道な展開といえるでしょう。

剣か君のエンディング分岐ですが、私個人の考え方ではありますが螢の目指す未来はやはり君ルート幸魂エンドが望ましいと思いますので、こちらのエンドを最後に残して頂くのが良いと思います。幸魂エンド終盤の螢の漢気は、他のどのキャラの追随も許しません。先の難しい恋路を歩む二人だからこそ、このエンドが最も輝くのだと思います。ただ、剣ルートで見られる螢と将軍家光公とのシーンも大変印象深く、考えさせられる名場面ですので必見です。

 

鈴懸(CV:逢坂良太

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<一八歳/推奨攻略順:奇→和→荒or幸>

人里離れた高尾山の山奥で、自然と天狗と妖怪に純粋培養された世間知らずの不思議な少年です。ド田舎という言葉を遥かに凌駕する俗世から隔絶された場所で育った為に、人としての一般常識や礼節に欠けている危なっかしい一面も。可愛い見た目と言動に惑わされてしまいそうですが、その実中々腕っ節の強い野生児といった印象でしょうか。医術の心得があるため他キャラ個別ルートでも度々活躍します。いろいろな方のプレイ感想を拝見して参りましたが、皆さん口々に「天使」と仰るのがよく分かります。子供のように素直な鈴懸が恋を知り、戸惑ったり時折意固地になって拗ねる様は大変可愛らしいです。無邪気な鈴懸を見ていると、自分はすっかり社会の汚泥に塗れてしまった...と改めて自覚してしまいます。心が洗われるとは、まさにこのことを言うのかもしれません。鈴懸のシナリオは他攻略メンツと比較してみても血の匂いが少なく暖かみがありますので、「剣が君」通してプレイ中の一服の清涼剤の役目も果たしていますね。

鈴懸は人間以外の生物の声を見聞きしたり、自然と心通わせることができるため、思わず風の谷のナウシカを重ねてしまいますね。特に奇魂ルートの鈴懸は、王蟲の群れを止めにゆくナウシカそのものです。生物種族の境界を超えて全ての生命へ分け隔てなく心を傾けることができる優しさが鈴懸の最大の魅力であり、しかし自己犠牲すら厭わないその優しさを持ってしても世に蔓延る不条理を正せない己の無力感との狭間で彼はやがて苦悩することとなります。

エンド分岐に関しては、どれが一番望ましい結末なのかはプレイした人それぞれで意見が分かれることと思います。私個人の意見としては、彼が一番心豊かに暮らせるエンディングはやはり君ルート幸魂エンドではないかと思います。鈴懸は確かに地位や名声を得るには十分な素質と能力を持っています。ですが、それを得ることが果たして彼にとっての本当の幸福に繋がるかどうかは別の問題でしょう。彼の優しさは高い地位や立場からもたらされるよりは、より民草に近い位置にあるからこそ生きるものであると感じます。しかしながら剣ルート荒魂の剣取御前試合決勝戦のシーンは、普段は可愛い鈴懸の真の強さを味わえる貴重なシーンでもありますので必見です。

ちなみに鈴懸個別ルートは他攻略メンツのネタバレ塗れのルートとして有名で、終盤攻略をお勧めされることが多くあります。まあ確かに螢と実彰に関しては正体がはっきり明言されるシーンはあります。縁の露出も多くありますので勘が良い方は縁の正体にも当たりはつけられるでしょう。ですが、明言されたところで各々サラッと流されておりあまり突っ込んた内容にはなっておりませんので私個人としては特に問題ないのかなと感じます。ネタバレを気にする方は、せめて実彰と螢の攻略は先に済ませることをお勧め致します。

 

鷺原左京(CV:保志総一朗

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<一八歳/推奨攻略順:荒→奇→幸→和>

保志総一朗演じる涼やかな声が醸し出す物腰柔らかな雰囲気と一見女性と見紛うばかりの端麗な容姿や仕草とは裏腹に、序盤から顔色変えず血の雨を降らせる情け容赦ゼロの辛辣な左京さん。一部のファンの間では「左京様」の愛称が付いていると小耳に挟みましたが、虫も殺さぬ顔をしながら敵を虐げる嗜虐的な一面や時折顔を覗かせる口の悪さが様付けしたくなる所以でしょうか。

清々しくドSな左京様ですので目的を果たす為にはどんな残酷な手段も選ばない様子から見て取れるように、左京のシナリオのテーマは「仇討」。ゆえに他攻略メンツのどのシナリオよりも死臭が濃く血腥い演出も多くあります。仇への執念深さはまるで蛇、燃え滾る憎悪はさながら地獄の業火の如し。自らの手を血で汚し修羅の道へ進む左京ですが、繊細な一面もあります。特に主人公との会話内で左京が零す一つ一つの言葉は意味深なものが多く、姫を気遣う言葉からはまるでかつての左京自身もそうだったのではないかと感じさせられることが多々あります。激しい二面性を持つ左京の言葉は、それが偽りなのか本心なのか時々判別が付かないことがままあります。ただ、主人公の身の上を案じる言葉だけは嘘偽りのないものでしょう。

前章では自分の本心を決して見せない左京ですが、後章の個別ルートを進めていくと彼が本来第一印象通りの育ちの良い優しい好青年であり、何か隠し立てしたり嘘を吐いたり誰かを傷つけたりすることが得意な性質ではないことが徐々に分かってくることでしょう。そんな彼が何の因果か己の得手不得手を捻じ曲げてまで復讐に狂う姿は大変痛ましいものです。主人公に出会ったことで取り戻しかけた本来の自分と、復讐と血の匂いに憑かれた今の自分との落差に、左京はやがて葛藤することになります。人を呪わば穴二つ、そんな諺をまさに体現させたようなシナリオです。荒魂エンドの左京はさながら、有り余る才能を持ちながら暗黒面に堕ちたアナキン・スカイウォーカーそのものです。(最早ネタバレ)

エンディングの攻略順としては剣ルート(荒魂奇魂)を見てから君ルート(和魂幸魂)に進むことを圧倒的にお勧めいたします。保志さん迫真の闇堕ち左京をご覧頂いた後でこそ、彼の君ルートは輝きます。「剣が君」作品全体の主役は九十九丸で間違いないとは思いますが、左京の君ルートのシナリオも大変完成度が高いのです。左京は当作品の裏主人公であるといっても過言ではありません。怨嗟に囚われて過去ばかり見ていた左京が、復讐の果てに彼自身の手で掴んだ未来を是非とも皆様にもご覧になって頂きたく思います。

左京の個別ルートによる他キャラのネタバレですが、明言はされていませんがほぼ縁の正体は露見していると言って良いでしょう。なので縁ルートだけは先に片付けておくことを推奨します。

 

九十九丸(CV:小野友樹

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<二〇歳/推奨攻略順:奇→和→幸or荒>

食いしん坊で、誠実な性格が魅力の九十九丸。彼を前にすると「花より団子」の諺がつい浮かんでしまうほど、小柄な体からは想像できぬ健啖家ぶりが印象的ですね。童顔で華奢な容貌からてっきり鈴懸と同年代なのかと思いきや、実は二十歳という攻略メンツのなかで三番目の年嵩というのは結構驚きでした。確かに見た目とは裏腹に言葉や言動を窺っていると、精神年齢は6人のなかでは実彰に次いで大人だと感じる一面もあります。ついつい可愛いと侮ってしまいますが野性的で逞しい一面もあり、生命力が結構強いタイプなんだとちょっと笑ってしまいました。幼げな見た目と、小野友樹さんの低く落ち着いた声が大変良いバランスを見せているキャラクターです。九十九丸の主人公への優しい「お嬢さん」という呼びかけが癖になってしまったファンは多数いると聞き及んでいましたが、確かに九十九丸の謙虚で穏やかな人となりがよく現れた呼びかけですね。癖になってしまうのも頷けます。

 九十九丸は田宮流居合の師匠に伝書(目録ともいう)を授かる条件として、剣取り御前試合で一番刀になることを提示されます。それゆえに彼は故郷である陸奥国の遠野(現在の岩手県)からはるばる江戸へとやってくるわけです。そんな行動から見て取れるように九十九丸の剣への憧憬の念は他の誰より大きいものです。ひたむきに剣の道をひた走る彼ですが、攻略を進めていくとその夢の道を妨げる大きな破滅が彼の身の内に潜んでいることが分かることでしょう。ネタバレを避けながら説明するのが難しいのですが、体内にいつ爆発するやもしれない不発弾を抱えている、と言ったら良いのでしょうか。他のどのキャラクターが抱えている問題よりも間違いなく深刻度がレベチです。九十九丸のシナリオは他の誰より「剣が君」の世界観の根幹である現世と常夜の概念が深く関わってきます。九十九丸が己の身の内に棲む諸刃の剣とどう向き合うのかによって、彼の結末は大きく変わります。まさに「剣が君」の真髄に迫るシナリオとなっています。私説明下手ですからこれ以上言及するとネタバレバーゲンセールと化しますのでもう黙っておきますね。是非ご自分の手でプレイして確かめていただれば幸いです。

他キャラの正体バレについてですが、九十九丸のシナリオは他の6人から独立しているシナリオになっていますので、バレ皆無といっても良いでしょう。ですが、彼はこの作品のメイン主人公に当たりますので是非最後の6人目として攻略して頂くこととを強くお勧めします。

エンディングの攻略順は奇魂、和魂を先にご覧頂いた後に、荒魂、幸魂と進んで頂くのが良いと思います。最後のエンディングは荒魂が良いのか幸魂が良いのかは、最早個人の好みの問題…プレイした人によって意見が割れることでしょう。私も悩むところです…幸魂は全ての真相が明らかになりますし展開も派手で手に汗握り最後に迎えるラストシーンはとても幸福に満ちた素晴らしいものです。では荒魂エンドはどうかと言うと、幸魂ほど派手で手に汗握るシーンは有りません。けれど静かで優しく想像力を掻き立てられ、何よりみんな大好きタイトル回収シーンがございます。まずは奇魂、和魂をご覧頂いてからどちらをラストにするのか決めても遅くはありません。どっちを最後にしても素晴らしいことに変わりはありませんので。

 

主人公(デフォルト名:香夜)

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今作の主人公の香夜ちゃんです。江戸で父親と二人で料理茶屋を切り盛りする町人です。母親を幼い頃に亡くしており、母親の形見の薙刀を受け継いで町人ながら薙刀道場に通っています。将軍家光公の妹君である久姫が嫁入りするにあたり、姫と瓜二つであったことから偽の花嫁道中で姫の影武者になれと幕府から無茶苦茶な密命を受けます。前章の偽の花嫁行列道中では心配性で怖がりな面ばかりが見受けられるように思えますが、後章では普段はおっとりした様子が窮地の場面では一転意外にはっきり物を言う勝気な瞬間も。本来は芯が強い江戸っ子らしい性分なのかもしれませんね。攻略キャラのルートによっては、守られているばかりではなく得意の薙刀で応戦する逞しい一面もあります。守ることもあれば守られることもある、総じて乙女ゲームの主人公らしい性格と言えるでしょう。

 

キタノリク的攻略おすすめ順のおさらい

黒羽実彰鈴懸or鷺原左京九十九丸

というのが私個人のおすすめ順ではありますが、乙女ゲームなので皆さんそれぞれ第一印象で気になるキャラクターがいることでしょう。とても良いゲームだけに順番を強要して嫌になって飽きて積みゲーになる…とか悲しすぎるので。最悪、ゲームの看板たる九十九丸さえ最後にすれば後はまあ、順番そこまで気にしなくて良いのでは?とも思います。もうね、好きにやればいいと思います。(投げっぱなしジャーマン)

 

<6人それぞれの個人ルートの推奨攻略順のおさらい>

黒羽実彰 荒→奇→和or幸

    奇or和→荒or幸

    荒→奇or和→幸

鈴懸   奇→和→荒or幸

鷺原左京 荒→奇→幸→和

九十九丸 奇→和→幸or荒

 

「剣が君」総評

攻略しやすさ◎!

導入部分である部分とキャラクターの個別ルートがはっきりと前章、後章として分かれていたのでプレイしやすかった印象です。また、個別ルートの後章でも分岐の部分は6人全員共通していたので理解しやすくサクサク攻略できました。メニュー画面にはパラメーターの表示もありますので、わざわざ攻略を見ずとも誰でも感覚でフルコンプできるところも良い点です。もしかして最近の乙女ゲームはみんなこんな親切設計なのですか…?10年前はパラメーター表示さえない乙女ゲームもざらにあったものですから…舞台設定は江戸時代ですがファンタジー要素も多く混ざっているため、時代劇ものに詳しくなくても十分プレイできますよ。

ボリューム満点!

エンディングは4種類、4種類のエンディングそれぞれの後日譚、スチルやオマケ要素も豊富なため、かなり大ボリュームの内容です。また「剣が君forS」には本編にあたる「剣が君forV」の他、FDである「剣が君 百夜綴り」も収録されているためかなりお買い得でしょう。

「剣が君」は本当にいいぞ

「剣が君」のタイトルが示す通りどのキャラクターのシナリオも、剣の道をとるか君(主人公)をとるか二択を迫られる場面が多くあります。剣の道を究めようとすれば主人公とは結ばれず、主人公と結ばれる為には剣を捨てねばならない。この儘ならなさこそが「剣が君」の醍醐味でしょうか。4つエンディング用意されており、しかもそれぞれに後日譚用意しているとは類を見ないですね。そして何より素晴らしいと感じたところは、全てのエンディングのシナリオの完成度が総じて高いことです。手抜き一切無し。Rejetさんいい仕事しますねえ。どのエンディングもキャラクターの魂を感じます。悲しい最期だったとしても、幸せに結ばれたとしても、どんな結末を迎えてもこれが彼らの生きた証であると確かに感じられることでしょう。気になっている方は、是非プレイしてみて頂きたいです。「剣が君」はいいぞ!

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※記事内の画像は全てRejet公式HP様からお借りしています。